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「意識を改めよ。油断をするな。京極は強い」
誰が言ったかはわからないが、事実、京極軍は天下の立花軍を相手に引けをとっていなかった。
立花軍の強さは徹底した軍律と鍛練にあり、皆、戦って勝ち抜く自信を持っていた。京極軍にそのようなものはない。それなのに、立花と渡り合えたのは、言わば気持ちであった。
京極軍の兵は自分の弱さをいやというほど知っていた。だからこそ乗り越えようとした。弱さは克服しようとした時に出る必死さは武器になった。しかし立花軍にはわからない。もがき、苦しみ、そこから何かを得ようとする心を理解できなかった。
怖い。
こんなにも弱きものがなぜ我らに立ち向かってくるのか。無敗の立花ぞ、無謀ではないか、という思いが、立花軍の剣筋を鈍らせた。
怖い。
京極軍は不安と恐怖を抱えながら戦っていた。しかし、勇気を出して踏み出した一歩の先に希望があると信じた。
「行け! 行けい!」
高次の声は、みなの背中を押す追い風になった。高次もまた彼らの背中に勇気をもらい槍を振るった。
「行けーーー!」
京極軍は炎とかした。
しかし、少しずつ綻びが出始める。埋めようのない力の差。それは歴然としていた。
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