蛍大名

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蛍大名

 十五日。 「いよいよだな、門斎」  高次の目は虚空を見ていた。 「孫左衛門のいった通りなら今日が本隊同士の決戦です」 「うむ」 「両軍とも史上類のない人数での決戦。どうなるかわかりません。早ければ数日、もしかしたら最悪一週間から数ヶ月はかかるやもしれません」 「長引くことは考えたくないな。家康殿を信じよう。我らが足止めしている間に必ず勝ってくれる」 「はい」 「我らも力の限り戦おう」  高次の目に力が宿る。 「では行きましょう」  高次は整列する皆の前に立った。  一人一人の顔を見る。みながみな、それぞれの思いを胸に秘め口を結んでいた。高次はその表情に満足した。 「皆のもの、よく聞け。今日、家康殿は決戦の地におもむかれる」  空を満たさんとばかりに声を張り上げた。表情には、昔の高次の面影は残っていない。
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