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とても小さな声で言ったけれど、加州さんの耳にはばっちり届いたみたいだ。加州さんは目を大きく丸めてから、噴き出すように笑った。
「なんだ、これが怖いのか」
そう言って、加州さんはワイシャツのボタンを一気に取って脱ぎ捨てた。鮮やかに施された刺青が、私の眼前に広がる。それを見たのは、斉藤さんの家で彼と出会った時以来だった。
「まだ見慣れないのか? もう何度も見ただろう?」
「でも、この前は真っ暗だったから……」
ちゃんと見えなかったから、恐怖心は薄れた。けれど、明るいライトの下で見るとやはり恐怖がこみ上げてくる。加州さんは私に近づき、軽く私を抱き上げて洗面台に軽く座らせた。私の真正面に彼の顔が近づく。
「それなら、ここで慣れろ」
「そ、そんな事言われても……!」
「莉乃」
加州さんの手が私の背中に回り、ワンピースのジッパーをゆっくり下ろしていく。
「これが、お前の【オトコ】だ」
露わになっていく素肌に、加州さんは唇を押し付けていく。それがくすぐったくて身じろぐと、加州さんは「じっとしてろ」と私の耳元で囁いた。
「……んやっ」
その吐息がじれったくて、私は思わず甘い声を出してしまう。加州さんは微笑み、耳に何度も口づけを繰り返していく。
「莉乃は耳も弱いんだな」
「だめ、しゃべんないで、くださ……っ」
「やめない」
耳たぶを食み、くすぐるように舐めていく。その度に私の口からは嬌声が溢れてしまう。加州さんはいつの間にか、私が身に着けていたブラを外していた。少しだけ体を離し、彼は私の体をまじまじと見つめる。
「やだ、見ないで……」
「綺麗だ。……お前も見たらいい」
加州さんは私を洗面台から降ろしたと思えば、私の姿を鏡に映しだすように立たせた。かろうじて引っかかっていたワンピースが床に落ち、ストッキングと下着だけになっていた。鏡には、私の白い肌と、加州さんの鮮やかな刺青が施された肩が映し出される。加州さんの手がお腹を撫でるように這い上がり、両手で胸を包み込んだ。
「んんっ……」
じんわりとこみ上げてくる快楽に、私は目を閉じる。加州さんはそんな私の耳元で、そっと囁くようにこう告げた。
「目は閉じるな。鏡を見ていろ」
「や……」
「恥ずかしいか?」
何度も頷くと、加州さんは口角をあげる。
「その恥ずかしがっている姿も可愛いな。……愛してる、莉乃」
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