1、「藤瀬愛奈×神田蓮」

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突然のLINEメッセージに、えっ?て思ったが…二時間くらいなら、と約束を 了承した。 待ち合わせしたバイト先近くのコンビニで蓮くんはやたら大きな紙袋を持ち 立っていた。 私が声をかけるとニッコリ笑い、コンビニで買ったであろう缶珈琲を私に手渡 す、そして近くの公園に行こうと誘う。 わけもわからず私はその背中につづく、公園の桜は散りはじめていた。 少し肌寒い夜風に手先を缶珈琲で温め、ヒラヒラ舞う桜の花びらを愛でてい ると、蓮くんは桜の下のベンチに腰掛け私を隣に呼ぶ。 大きめの紙袋から次々とタッパーが取り出され、蓮くんは慣れた手つきでテキ パキとベンチの真ん中に広げていく。 四つほどの大きなタッパーを並べ、さらに紙袋をゴソゴソしつつ“良ければ 蓋を開けてくれない?”と言う。  おそるおそる蓋を開けると、そこには様々なおかずとおにぎり、いわゆるお 花見弁当が出てきた。 「えっ!?これって手作り?蓮くんが作ったの?」 私が驚くと、蓮くんは照れ笑いしつつ、全部じゃないよ?ほら、唐揚げとかは 惣菜屋で買ったやつを詰めてるし、と笑う。 それにしても盛り付けも合わせて赤・緑・黄色と彩りよく隙間なく、ギッシリ とバランスよく詰めこんであり美味しそうだ。 何かと神経疲れもあって、最近ろくな物を口にしていなかった私の喉はゴクリ と鳴り、久方ぶりの空腹感を覚える。 良かったら少しでも食べてよ?ほら。  蓮くんは紙の小皿に適当におかずとおにぎりを取り分けると私の手のひらに ちょこんと渡してくれた。 …っっ、頂きます。 手作りのミニハンバーグを一口でほおばる、噛んだ瞬間に肉汁とデミグラス風 ソースが口いっぱいに広がり、ほのかな甘味が鼻孔をくすぐる。 “はあぁ、美味しい…。”
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