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私はつい目を細め、うっとりと心の声をもらす。
蓮くんは隣でお茶を出しながら、良かった、と笑う。
そういえばバイトの休憩時間、蓮くんはいつも手作り弁当だった記憶がある。
何となく実家暮らしなんだろうなぁ、と思っていたが聞けば一人暮らしだと
言っていたっけ…それならもしかして、家庭的な彼女でもいるんだろうな、
と余計なことは聞かずにいたのだが…。
私は小皿に盛られたおにぎりやポテトサラダ、パスタを口にしながら、ふと
隣で食べている蓮くんの横顔をチラリと覗く。
蓮くんは時より、ウンウンと頷きながら片手におにぎり、片手にソーセージ
と、まるで小動物のようだ。
それから私たちはお弁当を真ん中にアルバイト先の話や就職活動の話、最近
見た面白動画や出来事、とりとめのない会話をしながら二人でお弁当をほぼ
たいらげた。
「ご馳走さまでした。何か久しぶりに美味しい物食べた感じ、ありがとうね?
大変だったでしょう?」
私が手を合わせながら申し訳ない気持ちを率直に感謝の言葉にのせると、蓮
くんは“いえいえ”と謙遜しつつタッパーを片付けはじめる。
時計をチラリと見ながら“もう少しだけ時間、大丈夫?”と聞く彼に対し、私
がうなづく。
すると蓮くんは、コホンと咳払いをひとつし、私に向き直り急に真剣な表情を
見せるものだから。
何事かと私も少し姿勢を正し向き直る。
「あ、あのさ…愛奈さん。」
「な、何?改まって…。」
ベンチで向き合う二人、足元に桜の花びらが舞う。
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