かわいい人形

4/4
前へ
/26ページ
次へ
「ん、ぁああ……よく寝た。うわ、十時間経ってる」  時計を確認してもうすぐ昼時なことを知って驚くが、今日は休日なので学校に遅刻することはない。遊ぶ相手も、山田がいない今ではいないから、ゲームをする時間が短くなったくらいである。 「えーと、昨日何かあった気が」 「キョワン! ワンワン!」 「おっよしおぉ~~~~~朝から可愛いなあ~~~~よしよしよしよし」  ベッドに乗っかりペロペロ舐めてきたよしおが愛おしくて、いつも以上に体中を撫で回す。実に嬉しい。通常なら、呼んで初めて控えめに来るだけなので、珍しいこともあるものだと感慨にふける。  よしおの向こう側に、人形が一体落ちているのが見えた。 「ああ、そういえば人形を拾ったような拾ってないような」  人形を拾い上げると、顔がこてんとおかしな方向に曲がる。 「んん? これ、こんな曲がってたっけ。折れてる? ……そうか! よしおが遊んで折っちゃったんだな」  一人納得して頷く。よしおが寂し気な声で小さく反論した。 「クゥン」 「そうかそうか。いいんだぞ、それならこの人形はよしおの遊び相手にしよう! ワンちゃんのおもちゃになれるなんて、この人形も本望だろ」 「ほん、もうじゃ、ないぃぃ」 「なんか聞こえたか? 気のせいかな。いくぞ、よしお~!」  人形を高く放り投げる。 「はわわわ、ほわわ」  慌ててよしおがキャッチする。人形は怖いが、晴臣>>>>>>>>>>人形なので致し方ない。 「イイコだ。もういっちょいくぞ! それ!」  今度は高く上げ過ぎて、天井に勢いよくぶつかった。 「ぎょぼっべぇっ」 「キャンッ」 「すごいぞよしお!」 「ぎゃっいだ、いだい、止めて! 元のゴミ捨て場に戻してぇええ」 「ワンワンッ」 「ちょっと強く投げすぎたな。ごめんごめん、次はこうだ」 「ひいいいいい」 「キュンッ」 「もう、呪いませんからぁあああああああああああ」  呪いの人形(首と肩を絶賛負傷)が仲間になった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加