「反射反応」と「ありがとう」

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「残念ながら、もう目を覚ます可能性は非常に低いかと……」  小さい頃からお世話になっている主治医の先生の声がする。 「そんな……何か方法はないんですか? 月香(つきか)を、娘を助ける方法は!?」  この声は……パパ? 「こんなの、あんまりです……月香はまだ、18歳ですよ? 今年の春に医大に合格して、自分も医者になるんだって、頑張っていたのに……まだまだ楽しいこと、嬉しいことがいっぱい待ってるはずなのに……なんで……」  この声はママだ。どうして泣いてるんだろう? 私、何か悪いことしちゃったかな? 「申し訳ありません……手は尽くしましたが、月香さんを助けることが出来ませんでした」  ……え、どういうこと?  私、死んだの? 「そんなふうに言わないでください!」  先生の声に、つかさずママが高い声で叫んだ。 「……月香はまだ、生きてるんです。まだ心臓だって動いてるし、手だってこんなに暖かいのに……『助けられなかった』なんて、もう手遅れみたいに言わないで!」 「友香(ともか)、落ち着くんだ」  私の手を握りしめて、ヒステリックに泣き出してしまったママを、パパがなだめた。  良かった、とりあえずまだ、生きているみたい。 「このようなケースだと、ご家族も受け入れ難いでしょう……これからの治療法については、また明日、ご相談しましょう」  先生がそういうと、両親が頷く気配がした。  数秒間の沈黙のあと、「それでは」とまた先生の声がして、1人分の足音が、病室から出ていった。 「月香……」  重苦しい空気の中、パパとママが私の手をぎゅっと握ってくれた。  だけど私は、その手を握り返すことが出来なかった。身体が……動かない。
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