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「あのさ。仕事がどうとか、あたしが面倒を見てるとか、そういう押し付け、やめてくれる? いつから俺そんな役立たず扱いになったの?」
「あたしは頼まれて一緒にここに暮らしてんのよ。お父さんもお母さんもあんた一人じゃやっていけないと思ったから話がついたんじゃない」
「だからってそう恩着せがましく何でもこれ見よがしにすることある?」
あたしはカップをテーブルに置いて、じっと弟のほうを見た。
「……何それ。恩を感じ――」
「俺だって、世話されるだけのつもりで引っ越してきてないよ!」
「なら少しはあんたも――」
「少しは自分でやれとか千晶ちゃん言うけどさ、そもそも俺が自分でできるより早く全部一人で済ませてんだから手伝いのしようもないし、さっきだって俺がいいって言ってんのに勝手に余計な接待して。それで『仕事増やすな』って、完全に押し付けだろ!」
「だったら出て行けばいいでしょ!」
苛立ちのまま怒鳴っていた。
すると千裕もぐっと詰まった。
そのはず。まだ同居を始めて1カ月もたってないのに実家に舞い戻ってるんじゃ恥かくのは向こうで、あたしは何も困らない。
しばらくお互いじっと睨み合ってた。
やがて、あたしは背を向けて冷めたコーヒーを手に取った。
少しして、背後に吐き捨てるような声があった。
「……ガキじゃないんだから」
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