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いいじゃん、気にかけてくれるだけ
「ヒロ、何かあった?」
久しぶりの姉弟喧嘩の翌日、レッスンが終わっても帰る気は起きずぶらぶらしてると、佑真に声をかけられた。
「……何でそう思うんだ」
「帰りたくなさそうにしてるから」
「……まあ、当たってるけど」
横目で佑真の様子を確認すると、眉を上げた、聞きたそうにしてる表情がこっちを向いてた。
「……夕べ、ちあ……姉貴と喧嘩になった」
「え?」
佑真は少し動揺したように見えた。
「……別にお前のせいとかじゃない。やること増やすなって俺が怒られただけ」
思い返しても腹が立つ。
「……ほら、帰ってきた後に、おつまみ? とか出してくれただろ? そういうのしないといけなくなるし、ただでさえバイトも家事もしてないあんたの面倒見るだけで大変なんだからって……別に、何か食べるもの用意してくれなんて、言うたら、あれこれ俺のことを構えなんてのも頼んでないのに。自分で勝手にしたことをさせるなって怒ってんじゃねえっての。姉だからとか仕事してるからとか、何を偉そうに……正直、ウザイ」
一通りこぼしてからちらっと佑真のほうを向く。
すると、佑真は少し間を置いて、ぼそっと呟いた。
「……いいじゃん、気にかけてくれるだけ」
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