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「え?」
予想してなかった答えに改めて隣を見ると、近藤さんは椅子に座り直して考えるようにしていた。
「何て言うかな……言い方悪いけど、恩着せがましいのは勘弁、て感じかな。たとえば、俺の場合……家では、奥さんに、完全に寄りかかってるんじゃなく、適度に支えてもらってる、くらいがちょうどいい。時には、干渉しないでただ放っておいてほしいと言うか」
ちょっとムッとする。
「恩着せがましいって……そんなこと言っても、せっかく来てるのに放っておいてるんじゃ失礼じゃないですか」
「弟さん、特に何も準備してなかったんだし、千晶ちゃんにも何も言ってなかったんだよね? だったらその友達もさ、何も出ないとかそういうのも全部承知の上で来たとは考えられないかな? もしそうだとしたら、無理に接待しようとしても迷惑かかってるのは千晶ちゃんだけじゃん」
返事が出なかった。
「会社もさ……社内がこんなだし、千晶ちゃんがいて助かってるけど、全部私がやらないと、って思い込ませたいわけじゃないよ。もちろん、いなくなったら困るのは間違いないけど『私がいないとダメじゃないですか』とか思ってるなら、俺としては逆にプレッシャーだ」
「別に、そこまでは言ってないですけど……」
「全部面倒見てやってるんだって感じの圧とか、そういう扱いは嫌じゃないかな? 弟さんも」
「……だったら、家事とか、自分のことくらい自分で――」
「手伝うチャンス、出してる? それとも、『うちの幹部社員みたく』協力は期待しないで最初から二人分全部自分でやっちゃってる?」
……それは。
「千晶ちゃん、すごく責任感が強いし、会社でも総務や事務はほとんど俺たちでしかやってないからいつも仕事がたくさん、忙しい状況が当たり前のように思えてるのもわかるけど……でも、自分からわざわざ忙しさを増やすことはないと思うよ。弟さんだって、子どもじゃないだろう? 全部やってあげなくても倒れたりはしないだろうし、そこもうちょっと信用してあげてもいいんじゃない?」
あたしは、何も言えないでいた。
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