11人が本棚に入れています
本棚に追加
ここから先は「大人二人」
「「……あ」」
俺が遅いのか向こうが早いのか、佑真に話を聞いてもらったその日の夜、俺はアパートの入口でちょうど帰ったばかりらしい姉とばったり対面した。
手に持った紙袋を握り直す。
なんとなく遠慮し合いながら二人、中に入った。
「……千晶ちゃん」
くすぐったい勇気を振り絞って、話を切りだす。
「何?」
「……俺、色々観たり勉強したりで、うちで過ごす時間長いし、それに夢中になってると家の周りのこととか、それどころじゃなくなる。でもそれ、代わりに全部やってもらって当たり前とか、世話してもらってるって思ってるわけじゃなくて。本当、そのまま、こっちはこっちで放っておいてくれていいんだよね……。逆に俺も千晶ちゃんのやってることにも口出しや文句言わないし、家事も自分の分、できるし。あと、バイトくらい、探すから。生活費もそうだけど、生で舞台観に行くにもお金、いるし」
見ると、姉はぽかんとした表情で俺の話を聞いてた。
最初のコメントを投稿しよう!