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すっかり遅くなり、帰りにスーパーに寄った時、母親からメールを受信した。
『二人ともちゃんと食べてる? 千裕もちゃんと生活できてるよね?』
じっと画面を見る。
不愉快だ。
それを何であたし一人宛に送るの? これであいつの食生活が乱れたりしたらこっちのせいみたいじゃん。
今までもずっとそう。お姉ちゃんなんだからちゃんと見ていなさい、頼りにしてるからって。
でも、これが変わらずあたしの役目なら、全うするしかない。
ぐっとカゴを持ち直す。
二人分の食料品って、重い。
それでもやっと帰宅し、スーパーの袋を下げてアパートのドアを開けると、ガヤガヤと人の声が聞こえた。
見ると、リビングで弟の千裕が今日もまた、じっとパソコンの画面に映した映画か演劇か何かを観ていた。養成所に入学してから毎日欠かさず何かを鑑賞してるけど、本当にそんなものでいいのか心配になる。
「……どう? 実際にレッスン始まって」
当然のように夕食の用意はなく、あたしは台所に立って、話を振ってみる。
千裕は画面から目を離さず答えた。
「思ってたより、すごいやつがたくさんいて大変だけど……でも、気の合う友達もできたし、やって行けると思う」
友達か。
「女の子の連れ込みとか禁止だからね」
今のうちに牽制しておく。
冗談じゃない。ただでさえ一人の世話でいっぱいなのに、もし小姑じみたことしだしたらと思うとぞっとする。
実家だったら、家のルールとかも、親、つまり自分じゃない大人、が決めたものに一緒に従っていればお互い不便ないんだけど。
野菜を刻みながら考えた。
思えば、親もいなく姉弟二人だけで生活って状況は初めてだ。
だからなのかな。今さらどう接したらいいのかわからないし、距離感とか、あたしの責任範囲の区切り方が難しい。
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