やること増やしてるだけのやつ

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やること増やしてるだけのやつ

 思ってたよりすごいやつがたくさん、なんて、かなり婉曲的な言い方だ。  芸能界は競争がえげつないし、圧倒的な才能や技術を持つライバルとか性格悪い関係者とか、そんなものの存在は普通に予想してたけど、こうも早く対面するとは。  顔がいいだけだの、いい気になるなだの、生意気だの色々言われたのは当然。課程が始まって数日たたないうちに俺は軽い嫌がらせのターゲットになっていた。 「はい、河村(かわむら)くんも飲むだろ?」  ある日のレッスン前、スタジオに着いた直後に一期上の先輩にコーラの缶を一本突き出された。見ると、周りには同じように缶を手にしたライバルたちがいる。 「……いや、何か悪いですし――」 「気にしないで。ほら」  ちょっと威圧的にぐっと押し付けられ、仕方なく受け取った。 「……飲まないの?」  周りの視線もこっちに集中してた。  促されるままプルタブに指をかけようとした時。
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