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「待て」
背後から肩を掴まれた。
振り向くと、同じ課程を受講する同い年の同期、佑真がそこにいた。
「開けるまで少し待ったほうがいいぞ。泡が収まるまで」
え……?
「……こいつに渡したこの缶、思いっきり振ってましたよね? さっき」
そう言って佑真がじっと見た先輩は少しだけ視線を泳がせた。
「……何を根拠に。証拠でもあるなら――」
「じゃあ、今すぐ自分の缶とこれを交換してこの場で開けてみせてください。何も仕掛けてないならできますよね?」
しばらくの睨み合いの末、結局先輩とライバルたちは何もせず、怪しいコーラの缶を残したまま場を去った。
「……どうすればいいんだ、これ?」
なんとなく佑真に向けて缶を差し出した。
「だから、少し待ってから開ければいいだろ。欲しくないならもらうけど」
「……いや、後で飲む」
しばらく、二人とも沈黙してた。
「何か……ありがとう」
「……別に」
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