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3.イライ、イライ、イライ
これから、どうしたもんか......。
「そこの君、少し話をしよう」
記憶が無いだけでも大変なのに、その上に人に話しかけることも触れる事も出来ない。
本当にどうしたもんか......。
「呆然としている所に、申し訳ないが、
君の助けを少し借りたく思っていてね」
こちらが気づいていないのが分かっている上で、話しかけてくる男性は、
腰から手を動かし、こちらの肩に──。
そしてその手は、
肩を通り抜けることなく、触れあわされた──。
「ふぇっ?!
気のせいか誰かに触られ──」
身体に触れる感触に意識がいったと同時に、
脳内に様々な映像が流れ込み──。
「誰が助けてくれと頼んだ......!!
俺は......頼んでなかっただろ......。」
何だこれは......。
突然、何かが......見えて。
黒髪の男性が、
怒りと悲しみを含む顔で地面に座り込み、
それをしゃがみこむ形で見つめる、
茶髪よりの黒髪のロングの女性が寄り添うように、何かを言っているようだった──。
そして、ここで再び肩を触れられる。
今回は叩くような強さで手を使われ、
意識を引き戻された。
「気づいてもらってすぐにすまないが、
協力依頼を送らせてもらったよ。」
「えっ? ああ、はい......?
依頼......? 僕に......?」
困惑の表情が拭えないまま話を進めようとする男性に目と少ない言葉数で訴えかけたが。
「あぁ、君にだ。
困惑するのも無理はないが、時間がもうほ
とんど無いんだ。」
「だから単刀直入に進めさせてもらう」
わかるくらいの深呼吸をして、
男性はこちらの様子を細目で確かめ。
「先程の男性と女性を救ってやって欲しい......。」
「────」
少し考え込んだ、本当に少しの間。
だが、その時間に色々な事を脳で考え過ぎて、長く感じて、答えを探した。
「ごめんなさい、
僕は自分のことで精一杯で......。
だから──。」
「そうか、だが君の知りたい悩み事の答えを
見つけようとするのなら、急いだ方が良
い。」
声を遮られ、その言葉を聞いて、
返答をしようかと思い至った瞬間、
あちら側が「そして」と言葉を紡いで、
再び遮られる──。
「その答えは、協力してくれれば自ずと分かるだろう、君が単体で探すよりも早く。」
その発言を聞いても尚、
迷う自分が心の何処かに存在していた。
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