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事務所に戻ると、既に時刻は深夜2時を迎えていた。ようやく意識がはっきりした永島と共に薄暗いフロアへ戻る。彼は真っ先にソファーに寝そべった。脱力感は計り知れないことだろう。 「泰介、少しいいかな。」 その言葉が妙に弱々しく、不安定に聞こえた。もしかしたら彼も憑かれたのではないか。それともこの仕事を降りてしまうのか。そんな不安が過った遠藤はすぐに永島の前に立った。 「どうした。」 「提案がある。この件を終わらせる方法。」 唾を飲む音が秒針を刻む針の音に重なる。永島は深い呼吸を繰り返してから一言だけ言った。 「親父に頼む。」 時が止まったように思えた。少し時間をおいて遠藤は答えた。 「だってお前、勘当されたじゃないか。」 「考えたくはなかったけど、でもこれが出てきたんだ。」 そう言って上体を起こし、永島は左のこめかみを摩った。ミミズ腫れのようなものを指差す。眼鏡を外して言う。 「泰介も覚えてるだろ。俺が勘当されることになった怪奇事件。多分このレベルは俺だけじゃ太刀打ちできない。」 遠藤は15年前を思い出していた。高校2年生、遠藤と永島が初めて除霊に失敗した事件。この道を選ばざるを得なくなった事件。蒼白い月明かりが差し込む窓を眺めながら、17歳の2人を脳裏に浮かべていた。
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