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千葉県は富津市の狭い車道を駆けるパブリカの中で、永島は後部座席に座る2人に自己紹介を行っていた。太い腕を組んで木本は唸るように言う。
「へぇ、霊媒師には見えないな。セールスマンかヤクザだな。」
「ちょっと、木本くん。そういうこと言わないの。」
隣で松尾がそう諭すと、木本はすいませんと言って肩をすくめた。彼女は眉をひそめて言う。
「もう、あの2人は成仏したってことでいいのかしら。」
「そうですね。風見夫婦も、それを取り巻く霊も、全て。」
「よし、着いたぞ。」
遠藤はブレーキを踏んで風見一家が澄んでいた平屋の前に車を停めた。相も変わらず人の数は少ない。永島は平屋を眺めて呟いた。
「あの呪いは、知らない場所から随分長く続いていたってことだな。」
その通りだった。千葉県富津市の外れから東京の山に眠る霊を呼び寄せる、雄大の言っていた”呪継”に距離は関係ないのだろう。しかしそれは人間同士でも同じだった。相手が遠く離れていても、思い続けることはできるのだ。
4人は並んで平屋に向かって手を合わせた。それぞれが何を思っていたのかは分からないが、それでよかったのだ。メッセージは届けたい相手に届けばいいのだ。
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