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ボンジョルノから出ると、相変わらずそこに青空はあり、降り注ぐ日光は陰る様子すらなかった。
もちろん自転車もパンクしたままで止めた場所にある。
せめて誰かが盗んでいってくれてれば。そう思わずにはいられなかった。
炎天下に置いていた自転車のハンドルは、握った手に染み込んでくるほど熱くなっていた。
「美味かったです」
店長にそう伝えた時のドヤ顔は、冷やしエスプレッソはイマイチだった、ぐらい言うべきだったと勇作に後悔させるほど鼻についた。
そして請求された金額も、鼻につく金額だった。
すべてイタリアから取り寄せという話については納得できる金額だった。
「自転車……押して帰るしかないか」
財布の中をすっからかんにされた勇作は、そう呟いて深いため息を吐いた。
やっぱり冷やし中華は普通が一番だ。
日差しを浴びながら、勇作はしみじみそう思ったのであった。
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