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ミーンミーンとあちこちでセミが鳴いている。
青い空から容赦なく照りつける太陽。
そして、白い入道雲。
空気も揺らめく極暑の夏だ。
自転車がパンクしてしまった入木勇作は、重たい鉄の塊と化した自転車を押しながら、炎天下をひたすらに歩いていた。
ダラダラと流れる汗。
運動不足の体は、少し前から限界を訴えていた。
いい加減どこかで一休みしよう。
「どっか……とにかく……店は……」
きょろきょろと見回す勇作の目に、一枚の張り紙が飛び込んで来た。
冷やし中華、始めました!!
「こ……これだ!!」
勇作は思わず握った拳を天に突き上げた。
場末の中華屋。
これならが汗だくで入っても気後れせずに済む。
おまけに店内はクーラーで冷やされているだろう。
冷たい水やおしぼりだって出てくる。
さらにはスポーツ新聞に、運が良ければ映りの悪いテレビで野球のデーゲームを流してくれているかも。しかも安いはず。ここで一休みして、回復してから自転車屋へ行こう。
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