波打ち際

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《…今日は満月。潮の満ちる日。》 崖の上で見渡す限りの星空。それを海が照らしてまるでどこまでも吸い込まれそうだ。 ヴェネと呼ばれるこの街が俺は好きだった。 ここは貧しい街だが、美しい。 ここは最も海の近い街と呼ばれていた。 そんなヴェネで俺は育ち、今日で16歳だ。 でも祝ってくれる人は居ない。 父さんは昔、嵐の中、建築中の建物の下敷きになった。 そして母さんは今日、心臓の病で亡くなった。 今日は俺の誕生日と母の命日になった。
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