左手はずっと君をさがしてる

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はぁ、と小さく息を吐き出した俺の顔を窺うように長月が覗き込んだ。 「どしたの宮森」 「いや……最近俺さ、村瀬が何考えてるのかよく分かんない時があって。すごい皮肉言われたかと思ったら、露骨に心配してきたりとか……前はそんなこと無かったのに」 こんなことを長月に愚痴る俺も変だけど。 村瀬と長月って雰囲気が似てるし、何か分かることもあるんじゃないかって。 「うーん、それ、単に村瀬の過保護がエスカレートしただけだろ。今に始まったことじゃないし、心配しすぎだって。気付いてないの宮森だけだから」 長月はなぜか笑いを堪えながら、俺の肩をバンバン叩く。 「ごめん、全然、言ってる意味がわかんない」 過保護って何だ? 村瀬って俺の保護者になりたいってこと? 「例えばクラスが別々になったらさ、お互いの行動とか見えないだろ? 宮森ってちょっと鈍いし、抜けてるとこあるから、離れてる分、村瀬なりに心配してるんだと思う」 「長月ってサラッと毒吐くよね」 「悪い、そういう家系なんだ」 俺は鈍感だし、抜けてるし、男らしくないし。だから村瀬はずっと気にかけてくれてるってこと? 今まで気づいてないだけで、俺はずっと村瀬に心配されてたってこと? 「何か……ちょっと、腹立ってきた」 なんで俺より誕生日の遅い村瀬に気遣われてるんだよ。 俺の方が足速いし、二重跳びも先に出来たし、納豆食べれるし。なのに、なんで子どもみたいに心配されなきゃいけないんだよ。 「え、悪いって。俺の口の悪さは姉貴譲りというか」 「ああ、違う違う、長月のことじゃなくて。ちょっと村瀬を見返してやろうと思って。俺甘いものが好きだけど、今すごく辛いものを食べたい気分」 「ほーお、宮森が燃えてる。いやあ、今日の合コン楽しみだな〜」 俺だって楽しみだよ。 村瀬の過保護が必要ないんだって、絶対分からせてやる。
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