言葉はいつも薄っぺらいよ

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いつものように、自転車の後ろに村瀬を乗せる。下り坂に差し掛かる手前のペダルは重く、9月の太陽は中途半端に高い。汗が滴る。 「おっも、村瀬、太った?」 「ばーか、背が伸びたんだよ」 「え? まだ伸びてるの?」 俺は毎日せっせと牛乳1リットル飲んでも、去年から1センチしか伸びていないというのに。 「宮森は中学ん時からあんまり変わらないな」 「こ、これでもちゃんと伸びてんの!」 「へー、今どんくらい?」 「うっ……教えない!」 「何で?」 だって最近、すぐ馬鹿にするし。 166とか。村瀬と10センチ以上違うし。 あと、 「さっきの曲、教えてくれなかったし……」 下り坂にタイヤが吸い込まれる。 踏み込む必要の無いペダルを、わざと力一杯足裏で蹴る。 「え、まさか、怒ってる?」 アスファルトを車輪が転がる音。湿度の低い風音。耳に髪が擦れて、村瀬の声が遠くなる。喉の下につっかえた感情を、やみくもに吐き出していた。 「なんかっ!」 最近の村瀬って。 なんか、やだ。 そう口にしそうになって、慌ててブレーキを握りしめる。 姉のおさがりの自転車はボロくて、素直に止まらないまま転がり続ける。耳をつんざくような高音が、坂道を数秒舞い上がってから、ようやく停止した。
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