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「み、宮森、どした?」
驚いた低い声が背中を叩く。
自転車を降りて、俺の横に来た村瀬の靴先を見つめる。見たことの無い新しいナイキのスニーカーだった。
いつ買ったの?
「ごめん、ちょっと……モヤモヤしてて」
俺と村瀬って、いつも何喋ってたっけ。
「いや……俺の方がごめん。さっきのは」
「違う、曲とかじゃなくて」
「え?」
「なんか、最近の村瀬って、変だよ」
変なのは、俺も同じなのかもしれない。
「変、か……」
はは、と小さく息を吐き出した村瀬の笑い声は、少し自嘲気味に聴こえて、歩き出すその背中はひどく遠く感じる。
「むら──」
「宮森、ちょっとそこのコンビニ寄ろ。暑いし、アイス買ってこ」
振り返った村瀬の顔は、相変わらず欠点ひとつ無い爽やかな笑顔で。
だけど、いつからこんな大人びた顔をするようになったんだっけ。
毎日会ってるはずなのに。
たった半年、クラスが違うだけなのに。
知らないことが増えるって、なんでこんなに嫌な気持ちになるんだろう。
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