言葉はいつも薄っぺらいよ

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コンビニの中は、真夏と変わりないキンと冷えた冷房が効いていた。 「俺、仁志みたいに歌上手くないから、カラオケって苦手なんだよな」 ひとりごちた村瀬が、冷凍ショーケースからいつものアイスを掴み、ふっと顔を綻ばせる。 向けられるいつも通りの穏やかな表情。 ここ最近の村瀬を変だと感じるのは、単なる俺の気のせいなのだろうか。 クラスが離れた分、不安とか寂しさとかが、そう思わせてるとか…………あれ? 俺……寂しいの? 「おい、聴いてる?」 頭のてっぺんに軽く手刀が落とされて、ハッと顔をあげる。 「あ、ご、ごめん……何だっけ?」 目の前にずいと差し出されたのは、半分こされたいつものアイス。 会計も知らない間に村瀬が済ませてくれていたようで、差し出されたアイスに慌てて手を伸ばす。 「今日の合コン、可愛い子いるといいなって話」 寂しいとか、おかしいって。 「ああ、うん……花園の子だしね。まぁ、村瀬と長月に全部持ってかれちゃうだろうけど」 いつも一緒にいるのに。 「俺はともかく、長月は器用だからなあ」 「村瀬も器用じゃん。昔から何気にモテるし、背高いし」  気にしすぎだよ。 「背は関係ないだろ」 「あるんだよ!」 苦笑しながらコンビニの扉を押し開ける。 口に入れたホワイトサワー味は、わずかに鬱屈し始めた気分を優しく持ち上げてくれる爽やかさだった。 「宮森ってさ、」 押していた扉が不意に軽くなる。 村瀬が俺の背後から扉を押してくれていて、 「今まで好きな子とかいた?」 見上げたその顔に、脈が速くなる。 「な……なんで急に」 なんで俺、緊張してるんだろ。 「いや、そういや俺たちってそういう話、した事なかったなって」
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