言葉はいつも薄っぺらいよ

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──── 『クールな部屋』 仁志からのメッセージで、恐らく下らないダジャレで9番ルームだろうと、カラオケ店の受付で村瀬と頷く。 目的の9番ルームは二階らしく、店内の階段を登りながら後ろの村瀬に振り向いた。 「ねーねー、村瀬。番号じゃなくてさ、本気でクールな部屋だったらどうする?」 「例えば?」 「ハードロック好きの店員がさ、ドリンク持ってくるたび乱入して一緒に歌ってくる部屋とか」 「それクールじゃなくて恐怖だろ」 ケラケラ笑いながら到着した9番ルームの部屋を村瀬がノックする。続いて俺が部屋のドアレバーを引くと、開いた扉の先では俺が思っていた通りのクール……じゃなくて。 なぜか背中に『地動説』と書かれたTシャツを着た仁志が、マイクを握りしめて振り返った。 「よおおぉおーー! 学年一の爽やかイケメン村瀬と学年一のペット級可愛さの宮森、このツートップがようやくお出ましだああぁあーー!」 「きゃああぁあーー!!」 「ひぃっ!!?」 バタン。 反射的に閉めた扉の向こう側では、まだ仁志が叫んでいるらしく、微かに声が漏れ聴こえる。 「な、なに……今の」 「さぁ……にしてもすごいテンションだったな」 「お、俺やっぱ、帰ろっかな……なんか怖いよ」 すがるように目を向けると、村瀬も同じく複雑な顔で笑っている。 おまけに花園の子って、あんなにテンション高いものなの? もっとしっとり慎ましい感じだと思っていたから、ノリノリだったのには流石に驚く。 そもそも、ペット級可愛さってどういう意味だよ。
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