言葉はいつも薄っぺらいよ

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もう一度扉を開ける勇気もなく、廊下でまごまごしていると、9番の扉が内側から静かに開いた。 「悪い悪い、今日は珍しくお前らが来てくれるから、仁志が浮かれちゃってさ。大人しくさせたから入って」 長月が扉から顔を出して手招きする。 こういう時、本当に頼りになる広報委員長様様だ。 「お、お邪魔しまぁす」 長月に促されて開いた扉から中に入ると、室内は度々使っている個室よりも広く、部屋の壁沿いに設置された大きなソファには、花園の女の子五人が座っていた。 なぜか拍手で出迎えられ、俺と村瀬は顔を見合わせて、とりあえずの会釈をする。 「花園はもともと五人で、こっちが一人来れなくなったから、人数ぴったりなんだ」 長月に耳打ちされて室内を見渡すと、仁志と同じ軽音学部の加治(かじ)が来ていた。 俺と村瀬を足して、確かに五人だけど。 ぴったり……とは? 思案している俺に、長月がソファを指差す。 「宮森はそこな」 用意されたかのように一人分だけ空いたソファ。両隣には花園の女の子。 「え、あそこ!?」 「そう、ほら行って行って」 いきなり隣に座るとか、俺にはハードル高すぎるってば! 尻込みしそうな俺のお尻を、長月がポンと叩く。 「大丈夫、みんなすごく優しくて良い子だから」 「そういう問題じゃなくて……」 「村瀬はもう向こうに座ってるよ?」 長月の視線を辿ると、いつのまにかソファに座る村瀬が、両隣の子たちから質問攻めに遭っている。 くっ、ここで怖気付いてどうる。 村瀬を見返すって決めたじゃん!
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