言葉はいつも薄っぺらいよ

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「それじゃあ全員揃ったし、自己紹介からいこうかな」 長月が立ち上がり、進行を始めていく。 室内に流れる音楽と声が不協和音になって、慣れない喧騒に緊張しているだけなのかもしれない。 どこが痛いのか、曖昧で。 どうして痛むのか、分からなくて。 それを押し流すように、ミルクティーを一気飲みした。 「じゃあ仁志から自己紹介よろしく」 長月の声に、みんなが仁志の方へ視線を移す。 女性陣が拍手をする中、俺たち男性陣は一斉に口を噤んで、息を詰めた。 「あー、どうも。緑川高校二年、仁志(にし)貴文(たかふみ)です」 長月をはじめ、俺たちが固唾を呑んで見守るのは、仁志がギターオタクの単なるロン毛な男前だからじゃない。 駟不及舌(しふきゅうぜつ)。 仁志の口からでる不必要な淫語を食い止めるためだ。 「特技はギターの音楽大好き人間です。ご覧の通り、俺の左手の指先はギターを弾くせいでカッチカチですが、もちろん下の息子もカッチカ」 「仁志ー!!!」 「あの馬鹿!!」 「うわぁーー!!」 「あぁーあ」 つまりこういう事態を、未然に防ぐ予定だったんだよ。 もう、手遅れかもしれないけど。
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