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「ぐぇほっ、ごほっ! ごめ、気管にっ」
「ああ、ごめんねっ、大丈夫?」
咽せ返る俺の背中を、右隣の子が優しく撫でてくれる。だけどそれすらも変に意識してしまって、意識してる自分も恥ずかしくて、咳は一向に治らない。
「おーい、宮森大丈夫? ちょっと休憩しときな。自己紹介は加治から行こうか」
司会の長月は苦笑しながらも、滞りなく場を回すのは流石と言うべきか。パンパンと手を打って、流れをすぐさま加治へと繋ぐ。
「仁志と同じ軽音学部の加治祐輔です。ベースやってます」
加治の自己紹介が始まったのを見計らって、ぜーぜー鳴る気管支を宥めながら席を立つ。
仁志に目配せすると、察してくれたのか前を通りやすいように身体をずらしてくれた。
「秋くん大丈夫? 一緒に行こうか?」
右隣の子に呼び止められて、冷や汗が吹き出る頭を必死に左右に振る。
来なくていいよ!
きみが変なこと言うからこうなってるんだよ! とは言えるわけもなく。
「トイレだから」と小声で返してから、いそいそと廊下に避難する。
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