言葉はいつも薄っぺらいよ

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一歩出た通路は、まるで別次元に放り出されたかのように静まり返っていた。 今までの騒がしさが嘘のような、しんとした通路をトイレに向かって歩き出す。 急速に冷えた頭は、当然とも思える結論を導き出していた。やっぱりどう考えても右隣の子の発言は、あの場のノリで言ってくれたとしか思えない。 あのメンツの中で一番地味な俺を選ぶなんて、考えられない。盛り上がるような接点だってまるでないし。 お互いまだ何も知らないのに、好意を持ってもらえるなんて、そんな上手い話があるわけない。 「はぁ……合コンってやっぱり上級者しか無理なんだよ」 上がったり、下がったり。 気持ちが散々振り回された後のような倦怠感を抱えて、押し開けたトイレの扉はやたらと重たく感じる。 お腹の底から吐き出した長いため息は、惨めになっていく気がして頭を振って打ち消した。 もし、あの子の事をもっと知ることが出来れば。その先に「好き」とか、そういう感情が芽生えたりするものなのだろうか。 そうやってみんなも、最初は何にも感じない誰かを好きになっていくものなのだろうか。
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