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「それじゃあ、一番の相葉くんから自己紹介してくれるかな?」
教壇に立つこの教師は、産休に入った担任のモッチーの代替教員として、本日この高校に赴任してきたばかりの、若くて美人の女教師。
委員長の情報では、あの白い清楚なワイシャツの下に、巨大な爆弾を二個隠し持っているらしい。
クラスの男子全員が誘われるようにガン見していた赤い唇の下のホクロに、小学校の頃、隣の席にいた食いしん坊の女の子を思い出した俺は、いつものように後ろに振り返った。
「ねーねー、村せ……あ」
目が合った後ろの席の森本くんは、文鳥みたいにつぶらな瞳を俺に向け、不思議そうに首を傾げている。
──……しまった。
「あら? どうかしたの? えっと、宮森くん、だったかしら」
お色気先生の名指しに俺は項垂れ、同中出身の仁志と長月はゲラゲラ笑い出した。
「せんせー、宮森くんは8年連れ添った相方と離れ離れになって、ちょっと傷心してるんです」
「慰めてやって下さい」
二人の言葉でクラス内がどっと笑い出す。
「そんなんじゃないってば!」
お色気先生に慰めて貰えるなら、悪くはないけど。
ほんとに、そんなんじゃない。
ただ単に村瀬とは長く一緒にい過ぎただけで、どうせそのうち慣れるに決まってる。
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