左手はずっと君をさがしてる

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村瀬とは小学3年の時から同じクラスで、加えて出席番号がいつも俺の次だったものだから、俺の後ろの席にはずっと村瀬がいて。それが8年も続けば嫌でも、身体に染みついてしまうのは仕方ない。 お色気先生は仁志と長月の言葉なんて気にもとめず、「さ、どんどんいきましょう」と青木くんを指差す。 俺の斜め前方では、明るい茶髪を一つに束ねた仁志の頭が振り返る。「またやった」と口だけ動かしてニヤつくギターオタク。 消しゴムを投げつけてやろうかと思ったら、仁志の一つ前の席に座っていた長月が目敏く睨んできた。 俺をダシにしたくせに、ちゃんと切り替えないとすぐに怒ってくる長月は、同学年とは思えないほど妙に大人びている。 そんな仁志と長月も、中学からずっと一緒の学校で、それでも同じクラスになったのはこれが二回目。 そう考えると村瀬との縁ってのは、やっぱり普通じゃないのだろうか。 「それじゃあ次は、宮森くん。自己紹介よろしくね」 今のクラスになって、そろそろ半年が経つというのに、未だに後ろを振り向いてしまう癖も、そろそろ本気で辞めなきゃと思う、今日この頃。 お色気先生もとい、新担任の松雪(まつゆき)先生に見つめられて慌てて立ち上がる。 先程まで怖いくらいの青空が広がっていた窓の外は、いつの間にかどんよりとした鈍色の雲がたちこめていた。 秋の空は変わりやすいなんて、誰かが言ってたっけ。 「宮森(あき)です。秋生まれの晴れ男。趣味はスイーツの食べ歩きです」
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