触れたくても触れられないのは

7/13
前へ
/73ページ
次へ
頭では分かっている。クラスが別々になったこの機会に、宮森への気持ちも手放した方がいい。 それなのに、気になって想いが溢れるばかりで。 日に日に制御が出来なくなっていた。 「人見知りで女の子の友達すら少なかったから、すっごく嬉しかったなぁ。宮森くんはね……暗くて存在感の無い私を照らしてくれる唯一の太陽なんだ」 「太陽って……」 大袈裟だな。 そう言おうとして、声が詰まった。 じゃあ、俺にとって宮森は……なんだ? いつも当たり前のようにそこにいて。 優しく包んでくれるような、温もりを与えてくれる。唯一無二で。 ずっと笑っていて欲しい人。 他の誰よりも幸せになって欲しい人。 俺にとって、一番大切で。 好きな人。 「そういうわけだから、同じ宮森くんを想う者同士これからもよろしくね、ライバルさん」 稲見に差し出された小さな手が、固い決意の証に見えた。 きっと宮森に相応しいのは、だれが見ても彼女で……──だから、その手を握った。 「よろしく。でも……もう昔みたいな感情はほとんどないから、安心して」 大切だから。 ずっと傍にいたいから。 そうするためには、この選択しかない。 「え?」 「昔はたしかに好きだったけど、今は、宮森に友達以上の感情は無いから」 この気持ちをそっと葬って、稲見と宮森の応援をしてやれば。 これからもずっと友達として、宮森と一緒にいられる。 「本当に?」 「あぁ、無いよ」 「ふぅーん」 そう決めたはず、だったのに。 あの合コンの日、どうして我慢出来なかったんだ。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加