69人が本棚に入れています
本棚に追加
覗き込んだ宮森の瞳は、純粋にただ真っ直ぐ俺だけを見てくれている。
友達だったこれまでと何ら変わりなく。
ただ、恋人であるという事実が追加されただけ。
「だ……だって……こういうの、はじめてだし」
「こういうのって?」
「え、だから……その、ほら」
「ん?」
だけど。
その瞳の奥には確かに、今まで見たことの無い熱がうっすら色づいていて。
「キ……キス……するんじゃないの?」
俺はたまらず苦笑した。
この鈍感な恋人が、俺の自制心も忍耐も、無遠慮にぶち壊すような言動を平気でしてくるのだから。
「して、いいの?」
頬を撫でた指で、宮森の唇にそっと触れる。
初めて触れたその感触に、心臓が高鳴る。
「つ、付き合ってる、わけだし……」
満更でもなさそうな表情に、手を首の後ろに回して、そのまま引き寄せた。
鼻先が触れそうな距離で、宮森の長い睫毛が濡れたように瞼に被さる。
それだけで、もう心臓は悲鳴をあげそうなほど煩く拍動している。
昔も今も。きっとこれから先も。
お前に心振り回されるのは覚悟の上だけど。
「じゃあ、する……」
それすら、俺は嬉しいよ。
最初のコメントを投稿しよう!