左手はずっと君をさがしてる

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──── 「あれ、仁志は?」 同じ掃除当番の木戸くんと掃除を粗方終えて、机を整頓していると長月が教室後方の扉から顔を出した。 「あ、お帰り。委員会は?」 「今日は元々無い日だから、資料作りだけ」 長月は今年度の広報委員長。 三年の執行部にいるお姉さんに無理矢理引き込まれた、って文句言ってたけど、こうして業務は真面目にこなすところは長月らしい。 「仁志なら部室の鍵開けに行って、そのまま先に行くって言ってたけど、連絡来なかった?」 「あー、俺、今日スマホ忘れてて。とりあえず店行ってみるよ」 「じゃあ、俺から連絡しとく」 制服のポケットからスマホを取り出すと、メッセージの通知が一件入っていた。 「あ、仁志かな?」 まだ集合時間までは時間あるけど、暇だから早く来いとかだろうか。 そう思って開いたメッセージは、仁志ではなく、先ほど話したばかりの村瀬からだった。 「誰?」 「……村瀬、から」 さっきはあんな風に揶揄ったくせに。 最近の村瀬は、やっぱり何か変だ。 『今日、苦手だったらすぐに俺に言えよ。途中で抜けれるようにするから』 村瀬だって、苦手なはずなのに。 それにこんなメッセージ、今まで一度だってくれたこと無かったのに。 「あぁ……これは、色々……漏れてんね」 上から俺のスマホを覗き込んでいた長月が、苦笑しながら俺の頭をポンポンと撫でる。 「なにが?」 「まあ、そのうち分かるよ」 なにが漏れてるのかよく分からないけど。
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