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「戦うんじゃなくて、笑わせるんだ」
「笑わせる?」
「そう。ママの体の中にいる悪い奴をやっつける力を『めんえきりょく』って言うんだけど、ママが笑うとその力がアップするんだ」
「じゃあ笑わせて、ママをレベルアップさせればいいんだね」
「レベルアップ……うん、まあそうだな。今はまだ手術したばかりだから、もう少ししたらママをいっぱい笑わせよう」
「うん!」
任せといてと、陸が力強くうなずいた。
「よし、陸も今日から男だな」
洋司は笑って、陸の頭をクシャッとなでた。
「えっ、ぼく、ずっとおとこだよ?」
きょとんとした表情で陸が洋司を見ている。
息子から指摘された洋司は、笑って「そうだね」と頷いた。
「でも、本当の男っていうのは、好きな女の人を守る人のことを言うんだよ。ママを泣かせるようなやつは男じゃない。ママがいつも笑顔でいられるように、パパと一緒に頑張ろうな。約束な」
「うん!」
洋司と陸は互いの小指を絡ませた手を、力強く2回振った。
「よし、じゃあママのところに行こう!」
準備をして二人は外に出た。
「ぼくが持つ」と、母親の着替えが入った大きな紙袋を持ち、前を歩く息子を見る。
頼もしい後ろ姿に、洋司は目を細めた。
完
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