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「陸は弟か妹が欲しいんだよな?」
「うん!」
嬉しそうに返事をする陸に、洋司は顔がゆがみそうになるのをこらえた。
「ママもな、赤ちゃん欲しいって言ってたんだけどな……手術して、赤ちゃん産めなくなっちゃったんだ……」
陸は父親の目を見た。洋司の目は少し赤い。
「だから……」
「弟も妹もいらないよ。ぼく、ママがいればいい」
洋司の目がますます赤くなった。
「そうか……この話をするとママは悲しくなっちゃうから、ママの前ではしないって約束できる?」
「うん。ママが悲しいのは、やだもん。ぼく、もう小学生だし」
今年の春小学生になった陸は、何かにつけて「もう小学生だよ」と言うようになった。
陸はいつもの調子で得意げに答えた。なんでもできるとでも言いた風な顔をして。
洋司の目は赤いままだが、いつもの表情に戻っていた。
「じゃあ、ママを悲しませないようにしような。もし、悲しませるようなやつがいたらママを守るんだぞ」
「わかった!」
陸はお気に入りの戦隊もののヒーローを真似て、ポーズをとった。
「それじゃあ陸にもすぐできる、悪いやつからママを守る方法があるから教えよう」
「えっ、何と戦うの?」
陸が目を輝かせて、洋司を見ている。フッと笑って洋司は答えた。
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