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八尋の過去に、椋太は言葉を継げなかった。これが、八尋の罪。龍神に思いを寄せてしまった罰なのか――。
「小夜は逃げずに、その場で命を絶ったようだ。龍神が社で眠りについてしまったのは、そのせいだ。神は死を嫌う」
八尋と自分は繋がっている。彼が味わった苦痛が同じように椋太に伝染する。
「私は小夜を不幸にし、神に邪な感情を抱き、龍神をも怒らせてしまった。そして何の罪もない、子孫である君に引き継がれた。私は、大罪人だ」
八尋は悲痛な面持ちで目を伏せる。
「……きっと、それが僕の役目なんです」
椋太はなぐさめるように口を開く。八尋はもうじゅうぶんに苦しんだはずだ。
「八尋さんの罪を引き受けて、龍神に許してもらうこと。神守である僕の役目で、僕にしかできないこと、なんです」
大丈夫、と八尋に笑いかけた。何だか不思議な気分だった。いつもは八尋に元気づけてもらうことが多かったのに。
「椋太……。私は先代神守として、君にすべてを伝えよう。持てる力のすべてを、君に捧げると誓う」
少しだけ、八尋が笑う。
「妖狐の他に、もう一人使者がいる。使者を呼ぶのは先代神守のつとめ。今度は容易に応じてくれるだろう」
椋太は安堵する。また妖狐の時のように、人が巻き込まれるのは勘弁してもらいたい。
「次は天狗だ。心の準備をしておくことだ」
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