六、花火と龍神

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  花火の音が聞こえている。一人静かに読書をしている結斗にはとても耳障りだ。顔をしかめ本を閉じた時、またも騒がしく玄関の戸が開いた。 「結斗さん! いますかぁ!」 (この声は、芽依か) この家はだんだん騒がしくなっていくなと思いつつ、嫌々ながら部屋を出る。 芽依は血相を変えて、とても慌てているようだった。 「どうしよう、結斗さん!」 「何があった」 面倒くさいと思うが仕方がない。芽依は今にも泣き出しそうで、すでに涙目になっていた。JKといっても、女の涙はあまりいい気はしない。 「椋太さんが、消えてしまったんです。お社のほうに歩いていったかと思ったら、すぅって」 「はぁ?」 見間違いではと言いかけてやめる。今の状況では、ありえないことではない。 「とにかく来てください‼」 放ってもおけず、結斗は芽依の後に続いた。
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