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それから数日雨が続いた。縁で膝を抱えて庭を眺めている楓の隣に、椋太は座る。楓はもとの水干姿だ。和服のほうがしっくりくるのだそうだ。
「傷は痛む?」
「ううん。平気」
静寂に雨音が優しく響いていく。
「……最近、雨ばかりだな」
「その方がいい。あいつらは神守である君のことも狙ってる。龍神が目覚めれば、大天狗だって無事ではすまないから。あいつらは師匠のことだけじゃない、龍神の力を恐れてる。だからここの雨は、よそ者のあいつらにとって針みたいなものだ。だから、龍神と深くかかわる神守を殺そうとしてくるはずだ」
天狗二人が去り際に言っていたことを思い出す。
「雨がやんだら、きっと襲ってくる。なわばりが広がれば、よそから子分天狗が大勢やってくるかもしれない。あいつらは師匠とは違う。人に仇名す輩だ。今度こそ、僕が倒さないと。ここに住まう人間たちを災厄から守ること。それが師匠の信念だった。僕も、守るんだ」
楓は錫杖をぎゅっと握った。
とはいえ、相手は大天狗二人だ。楓だけでは太刀打ちできないそうもない。彼が命を落としてしまうことは避けたい。
椋太はしばし考え、口を開いた。
「真正面から立ち向かわなくても、勝つ方法。戦わずして勝つ方法だってある」
「どうやって……」
椋太はじっと雨を見つめた。
「あの大天狗たちは、龍神の水が苦手なんだって言ったね。――なら、策はあるよ」
椋太は大きくうなずいてみせた。
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