七、孤独な天狗

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三日三晩降り続いた雨が晴れ、雲間から月が顔を出した。 何者かが、布団を敷いた椋太の部屋の畳を踏みしめた。さっそくお出ましのようだ。待ち構えていた椋太は息をひそめる。 「神守、覚悟」 低い声がした刹那、抜き身の太刀が布団のふくらみに突き立てられる。 「今だ!」 椋太は楓とともに部屋へ押し入ると、二人の大天狗めがけて桶いっぱいの水を放った。 「うわ!」 「な、なんだ!」 とたん、二体の天狗の動きが鈍くなる。やはり思った通り、水瀬神社の手水舎から汲んだ水は効果てきめんのようだ。 後ろに控えていた結斗が舌打ちをしつつ、苦しそうにしている大天狗たちをあっという間に縛り上げた。 「貴様ら、これですむと思うなよ」 「人間の分際で我らに楯突くとは、目にもの見せてくれる」 「うるせぇな、つべこべわめくな」 結斗は柄杓で惜しげもなく水を浴びせた。 「うわ、やめろ」 「黙るからやめてくれ!」 結斗の手が止まると、宣言通り天狗は押し黙った。このために睡眠時間を削られ、結斗はすこぶる機嫌が悪いらしかった。  
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