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三日三晩降り続いた雨が晴れ、雲間から月が顔を出した。
何者かが、布団を敷いた椋太の部屋の畳を踏みしめた。さっそくお出ましのようだ。待ち構えていた椋太は息をひそめる。
「神守、覚悟」
低い声がした刹那、抜き身の太刀が布団のふくらみに突き立てられる。
「今だ!」
椋太は楓とともに部屋へ押し入ると、二人の大天狗めがけて桶いっぱいの水を放った。
「うわ!」
「な、なんだ!」
とたん、二体の天狗の動きが鈍くなる。やはり思った通り、水瀬神社の手水舎から汲んだ水は効果てきめんのようだ。
後ろに控えていた結斗が舌打ちをしつつ、苦しそうにしている大天狗たちをあっという間に縛り上げた。
「貴様ら、これですむと思うなよ」
「人間の分際で我らに楯突くとは、目にもの見せてくれる」
「うるせぇな、つべこべわめくな」
結斗は柄杓で惜しげもなく水を浴びせた。
「うわ、やめろ」
「黙るからやめてくれ!」
結斗の手が止まると、宣言通り天狗は押し黙った。このために睡眠時間を削られ、結斗はすこぶる機嫌が悪いらしかった。
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