麻薬

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小説の恋愛に泣いたことはない。 ただただ美しいとしか思えない。 たとえどんなに切なくたって、美しかったとしても、結局は作り話なんだ。 虚構なんだ。 人間なんざには、本当に美しいものなんかは作れない。 まあ、美しいものを作ろうと思うのは人間だけか。 人々が美しいと思うのは、作り手が汚いものを取り出して 磨いて磨いて磨いて創り出した虚構の結晶(ものがたり)だ。 人々はその綺麗な結晶(ものがたり)に魅せられ、憧れる。 その憧れはその結晶(ものがたり)が自分に近ければ近いほど強くなる。 そうして膨れ上がったそれは、人々を無菌状態していき、その目にフィルターをかけていくのだ。 そのフィルターは、現実に少しでも負けそうになるとまた分厚くする衝動にかられる。
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