君に告げる音

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電話をかけてきたのは君の会社の同僚を名乗る人で、営業先から帰った君が社内で倒れたことをひどく動揺した様子で伝えてきた。 出勤時も外出前も、君の様子に変わりはなかったのに。本当に突然、頭痛を訴えたかと思うと、倒れて意識を失ったという。 君が運ばれたという病院名をメモしながら、電話の向こうから聞こえてくる人の声がが少しずつ遠くなっていく。 頭が鈍って、うまく思考が回らない。 そのときの記憶は、あとになっても曖昧で。自分がどんな受け答えをして、その後どうやって君が運ばれた病院まで辿り着いたのか。何ひとつとして覚えていない。 覚えているのは、暗く寂しい病院の廊下で、祈るように君が目覚めるのを待ったこと。 君の両親と、身体を寄せ合って固く手を握り合って。ただ、君のことばかりを考えた。 「心配かけてごめん」と、私に笑いかける君を。閉じられた無機質な白いドアの向こうから、何事もなかったように顔を覗かせる君を。 考えて考えて、祈り続けたのに。 君はそのまま、目を覚さなかった。
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