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君がいなくなったあと、身内と君に近かった人たちだけで、小さなお通夜と葬儀が行われた。
お焼香の匂いも、棺の前で唱えられるお経も、どこか別世界から届いきているかのように遠い。
遺影の中で笑っている君が、偽物みたいだ。
お通夜が済んで、翌日の葬儀が終わっても、私の目に涙が浮かぶことはなかった。
それでも青白い顔をして憔悴しきった様子の私に、参列者はみんな同情の言葉をくれた。
そのどんな言葉も、私の心を掠めては通り過ぎていく。
「本当に悲しすぎると、涙もうまく出ないわね……」
葬儀中も茫然と立ち尽くすばかりの私に、君のお母さんは悲しそうな顔でそう言った。君のお母さんも、病院で一度泣いたきり、涙を流していなかった。
けれど、綺麗な顔で眠る君と最後のお別れをして棺の蓋が閉められたとき、君のお母さんはついに絶叫のような泣き声をあげて蹲ってしまった。
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