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音の無くなった部屋で仰向けに寝転び、白い天井を無感動に見つめる。ただ息だけをしていると、不意にお腹がぐにゅりと今までで一番はっきりとわかるくらいに動いた。
はっとしてお腹に手をあてると、またさっきと同じようにぐにゅりと動く。
「励ましてくれてるの?」
掠れた声で問いかけたら、手の下に小さな反応が返ってきた。
きっとこの子は、君に似てとても優しい。
一度は止まったはずの涙が、目尻に溜まって頬を流れた。
私の中に宿る小さな小さな希望が、確かな意志を持って、絶望の淵から私を引き上げようとする。
泣きたいほどに悲しくても、声が枯れるほどに辛くても、君が不在の未来はこれからもずっと続いていく。君がいなくても、私の目の前には歩かなければいけない道がある。
あと少しだけ泣いたら、起き上がろう。うまく歩けないかもしれない。何度も転ぶかもしれない。
それでも、君のいない全ての時間を、君の分まで愛せるように。
君が残した未来とともに。
《Fin》
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