君に告げる音

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結婚をしてからの君との日々は、それまで以上に輝いていて、喜びと幸せに満ちていた。 新居は、ふたりが出会った市立図書館まで歩いていける距離にある新築のマンションにした。午前中に日当たりが良い、明るくて理想的な部屋だった。 ふたりで暮らし始めた私たちの日常は、それまでとは劇的には変わらなかった。 月に何度か図書館で本を借りてきては、リビングのソファーにふたりでくっついて座って、それぞれに読書を楽しむ。 本を睨みながら、君は難しげに眉を寄せたり、僅かに肩を揺らして口元を緩めたりする。君の百面相をこっそりと盗み見るのも、読書の時間の醍醐味だった。 ふたりで暮らすようになってから変化があったとすれば、これまで以上に絵本や児童書のコーナーが気になるようになったことだろう。
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