君に告げる音

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大人になってから改めて絵本や児童書を手に取ると、懐かしい話や深く考えさせられる話がたくさんあった。タイトルだけ知っていた未読の良作も多かった。 図書館にやってくる子ども以上に夢中になって閲覧コーナーに入り浸っていたら、他のコーナーで本を探していた君が、必ず私を見つけてくれる。 「いつか子どもが生まれたら、絵本をたくさん読んであげたい」 あれも、これもと。まだ顔すらわからない将来の子どものために絵本のリストを作る私を、君は優しい目で見つめて「気が早い」と笑っていた。 穏やかで、幸せな日々だった。 幸せで、幸せで。幸せすぎて麻痺しそうなくらいに。君との毎日に満たされていた。
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