ゲルゲーム

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 夕日に染まるアスファルトはまだ昼間の熱気を残しており、足元が生温かい。私は校門に背を向けて歩き出すと、空気はやはり臭かった。  クリーンアップを託された部員たちはみな、私や部長と同じ体質だったから、彼らといるときはいつでも、私の鼻は平和だった。でも、ひとたび部室を出ると、そこはもう濃い臭気が立ち込めていて、息をすることが苦しくなる。人口密度が高ければ高いほど、呼吸をするのがつらくなった。  制服のポケットから取り出したマスクを装着し終えた私は、スマホを手にし、『クリーンアップ』アプリを起動させ、先を行く生徒たちの背中に向けてカメラをかざしてみた。  ざっと見積もったところ、10人のうち6人はゲルに犯されていた。たいていのゲルは頭皮に付着していたが、なかには体の内部にまで侵入しているゲルもあった。  ゲルに内部を犯された人間は重症患者で、いくらクリーンアップを試みようとも、完全に元の状態に復元させることは不可能なのだと部長から聞かされていた。  総数として重症患者の数はそう多くはないのだが、気の毒なことに、そのほとんどが全身ゲル化していた。ゲルが体内に侵入するにはかなりの時間を要するらしいが、侵入されたら最後、急加速度的にゲル化が進むというのだから恐ろしい話だ。
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