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腐敗してしまった脳機能を回復させるためには、浄化されたゲルを本体に戻す必要があった。社会が平和にまわっていくためには、その構成員である人間の脳が正常に機能していることが前提だ。
汚れたゲルをひとつでも多く浄化させること。それこそが私たち特異体質の人間に与えられた重大なる任務だった。
自宅までの道すがら、私はできる限りクリーンアップ作業を実行した。その結果、今日1日だけで、1200近い単体のゲルを浄化させ、本体に戻した。が、問題なのは一体化してしまったゲルをどう扱うかにあった。
一体化したゲルの厄介なところは、浄化されたゲルの持ち主に向けて、再度ゲルを投げつけることだった。汚れたゲルは浄化されたゲルを侵食し、結果、汚れたゲルを倍増させる。だから、何としても娑婆に戻すことは許されないのだが、そうかと言って即刻殺処分するのもいかがなものか。
部長は、娑婆には正常な脳を持った代理人を派遣しているのだから、ゲル化した物体を殺したとしても何ら問題はないと言う。
確かに自分でもそう思う。でも、何だか違うような気もするのだ。
「部長は確かに『攻め方は自由だ』と言った」
呟いた私は、画面の中にある『コンテナ2』でうごめく2つの物体を見つめながら考えていた――
どうやったらコイツラは美味しくなるのだろうか、と。
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