ゲルゲーム

　校内でのスマホの使用は禁止されていたから、この１ヶ月のあいだ、基本的には校門の外に出てからクリーンアップの作業に取りかかっていたのだが、夏休みを間近に控えた今、私はどうしても校内の状況を一括して確かめてみたかった。
　特に気になるのは自分の所属する２年８組だった。とにかく、このクラスは異常に臭かった。部長からゲルの話を聞いて以来、クラスメイトのいったい何人がゲルに犯されているのか、把握したいという気持ちが募っていた。

　昼休み、私はついに意を決して、ロッカーからスマホを取り出し、後ろからこっそり室内の状況を確かめてみた。
　案の定だった。およそ９割の人間がゲルに犯されていた。しかも、クラスの人員は４０名足らずだというのに、ざっと数えただけでも全身ゲル化した人間が１０人はいるのだ。これでは匂いもきつくなるはずだと、私は妙に納得した。

　とりあえず今、教室内にいる人間に付着した単体ゲルから処理して行こうと思って、私はカメラのシャッターボタンを押し、クリーンアップをスタートさせた。
　そうして３度目の浄化作業にとりかかった頃、室内に担任のミヤジマ先生が入ってきた。まだ昼休みの時間だったから、何事だろうと思っていると、ミヤジマ先生は学級委員のカワサキさんにプリントを渡していたので、個人的な用事があったようだった。