プロローグ

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   そんなことを考えながらパソコンの起動を待っていると、スマートフォンにメッセージが来ていることに気が付く。  確認すると母親からの連絡で、メッセージ内容がでかでかと、画面いっぱいに表示されていた。 「元気にしてるの?あんたもうすぐ30なんだから、そろそろいい人見つかったの?あと、たまには実家に顔出しにいらっしゃい」  僕はそれを読むと、さっきまでとはまた違い、少しウザッたるい気持ちで大きくため息をつくと、アンバランスに割れた割り箸を置くこともせずに、利き手でもない左手で慣れた様に返信を打ち込む。 「そんな人居ないし、まだ27だよ。仕事が落ち着いたら帰ります」  そう返事を送ると、それを待っていた様にパソコンの液晶が青く光りだして、起動完了を告げる。  こうしてまた今日も、何の面白みもない動画を流しながら、冷えたご飯を食べる。  こんな生活が続いて行くのかと嫌気がさして、肩を落とすと共に、わざとらしく心の中でため息を吐く。  そんなことをしていると、僕の目に1つのネット広告が留まる。 [あなたの生活が、みるみる楽に、ますます楽しく。生活アシストAI!]  画面の中で3Dモデルのキャラクターが、元気いっぱい楽しそうに歌う広告に、僕は少しの嫌悪感を覚えたが、それと同時に興味も少し惹かれる。  AI。それは新しいもの好きな僕が興味を持つのには、十分過ぎる単語だった。 (生活アシストねえ。それこそ、こんな生活にさよなら出来るなら、それに越したことはないんだが)  僕は何気なく興味を惹かれて、その広告をクリックして少し調べてみると、スマホにも家電にも連動が出来ると書いてあり、僕はますます興味を惹かれて、物は試しかと深く考えずにダウンロードを始める。
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